離乳食を食べてくれない」
「作るのが大変」
「好き嫌いが多い」
赤ちゃんの離乳食はとっても大変。でもちょっと待ってください。
「離乳食はピューレをスプーンで」……その常識が離乳をむずかしくしていませんか?
赤ちゃんの口(くち)の力を奪っていませんか?

赤ちゃん専用の離乳食は作らず、固形食を〝手づかみ〟で食べ、口と歯の発達、そして「食べる力」と心身すべての能力を無理なく自然に伸ばす離乳法があります。
小児科医、看護師、歯科医、保健師、助産師、栄養士、保育士……子供の成長をサポートするプロがいま熱く注目する離乳法――BLW(baby-led weaning 赤ちゃん主導の離乳)のすべてをわかりやすく解説。
2008年に英国で出版されると大ブームとなり、現在はヨーロッパやアメリカを中心に20か国で翻訳出版されている話題の本、ついに邦訳!
カラー口絵8ページ付き。

◆本文中の家族の体験談より

メイベルにピューレを与えようとしていた2週間、食事の時間はまるで戦場のようだった。
メイベルがスプーンから何も食べようとしないから、わたしはすごくイライラしてたわ。
スプーンが問題なのか、ピューレの舌ざわりがいけないのか、両方のせいなのかわからなくって。
でもメイベルが自分で食べられて、自分でコントロールできるものを与えたときから、食事はあの子にとって楽しい時間になったの。
何でも食べてみようと思ったみたい。
スイートコーンのピューレはさわろうとしなかったけど、小さなベビーコーンをあげたらいくらでも食べたわ。
――ベッキー/メイベル(10か月)のお母さん

家族と同じものを食べさせるのは、とても簡単なことです。
上の子供たちにスプーンで食べさせていた頃のように、食べてくれるかどうかを気に病む必要なんてないんですから。
このやり方はとても自然に思えます――それにすごく楽しいわ。
――サム/ベラ(8歳)、アレックス(5歳)、ベン(8か月)のお母さん

◆まえがき より

赤ちゃんが初めて離乳食を口にする瞬間は、多くのお母さんやお父さんにとって忘れがたい出来事だ――それは赤ちゃんの人生におけるワクワクするような新しい章の始まりだ。
赤ちゃんが離乳食を初めて口に入れたとき、お母さんやお父さんは「よく食べる子」になりますようにと心のなかで願う。
赤ちゃんが食べることを楽しみ、健康的な食事をすることを望み、家族の食事の時間がおだやかで楽しいものになることを願う。

ところが多くのお母さんやお父さんは、固形食への移行は自分たち親子にとって大変なことだと気づいてしまう。
赤ちゃんが離乳食を食べるようになるのか、あるいは赤ちゃんの偏食や赤ちゃんとの食事中の争いに立ち向かうことになるのか――そういったよくある問題に悪戦苦闘する。
そして多くの場合、大人と子供の食事時間と料理を別々にすることで問題の解決を図ろうとする。

赤ちゃんの大人の食事への旅は、ある日お母さんやお父さんから人生初の裏ごしした食べ物をスプーンで与えられることから始まる。
けれども、もしこんなふうに始まらなかったら、いったい何が起こるのだろうか?
離乳食をいつ、どんなふうに始めるのかを赤ちゃん自身に決めさせたら、どうなるのだろうか?
スプーンで与える代わりに「適切な」食べ物を赤ちゃん自身に手でつかませたら、どうなるのだろうか?

そう、あなたと赤ちゃんはこの冒険の旅がもっと楽しいことにきっと気づくだろう――そんな家族が実際に増えているのだから。
赤ちゃんは食べる準備ができたら教えてくれるだろうし、ごく最初のうちからあなたの料理を分け合うことになるだろう。
ピューレにしたり、煮てつぶしたりしたものではなく、食べ物そのものを赤ちゃんが味見したり、チェックしたり、自分で食べたりして、体にいい家庭料理について学んでいくだろう。
赤ちゃんは6か月くらいの月齢になれば、こうしたことをすべてできるようになるのだ。

赤ちゃん主導の離乳は、赤ちゃんの咀嚼(そしゃく)能力、手指の巧緻性(こうちせい)、手と目の協調運動を発達させる。
お母さんやお父さんの助けを借りて、赤ちゃんは多種多様な健康的な食べ物を知り、大切な社交性を身につけるようになる。
そして必要な分だけを食べるようになるので、大きくなったときに太りすぎになることもない。
だが何よりも――赤ちゃんはBLWを楽しむようになり、その結果、食事の時間が幸せな、自信に満ちたものになるのである。

赤ちゃんの離乳食を紹介する本にはたいてい、レシピや献立表がのっている。
本書はまったく違う。
赤ちゃんに「何を与えるか」ではなく、赤ちゃんが「自分で食べるようになるにはどうしたらいいのか」について書かれている。
本書は、離乳食を始める方法としてBLWはなぜ合理的なのか、赤ちゃんの本能と能力を信用することがなぜ理にかなっているのかを解き明かす。
さらに、BLWを始めるうえでの具体的なアドバイスと、その先に何が起こるのかをくわしく述べる。
つまり本書によって、ストレスのない子育てについての極秘情報だったものが明らかになるのだ。

◆監訳者あとがき より――坂下玲子(兵庫県立大学看護学部教授)

赤ちゃんは成長発達すると自然に家族の食事に手を伸ばすようになる。
しかし多くの場合それは許してもらえず、スプーンからお行儀よく食べることを強いられる。
それを繰り返すと、もはや赤ちゃんは自分から手を伸ばすことをしなくなり、大きくなっても母親がスプーンで食べさせてくれるのを待つようになる。
そんな子供たちを大勢みてきた。
もちろん噛む器官や能力も問題なのだが、わたしは意欲という点で心配している。
欲しいものに手を伸ばすのか、与えられるのを待つのか、その態度は人生全般に影響を及ぼすように思えてならない。
本書の原書に出会ったとき、我が意を得たりと思った。

「自分で食べる」は、生きていく基本である。
と同時に、本書はその力が赤ちゃんのときから備わっていることを示している。
本書は「食べる」ということに焦点を絞ってはいるが、それを超えて、「人は自分で生きてゆく力を持っている」という哲学が貫かれているとわたしは思う。泣いて助けを求めることも含めて。
そして、自分のことは自身が主権を持つべきだという信念がある。
新しい食べ物にチャレンジすること、新たな味や世界を知ること、これらは無上の喜びだ。
赤ちゃんによいことは赤ちゃんが教えてくれる。その笑顔を信じ、赤ちゃんとともに冒険を楽しもう。
その感覚こそが赤ちゃんの力を引き出す原動力になる。

多くの方の心配は、「そんなことをして誤嚥(ごえん)や窒息が起きたらどうするの」というものだろう。
自分で食べるのは、食べさせてもらうより実は安全である。自分でコントロールできるのだから。
本書は、BLWの安全性について、先行研究を示しながらさまざまな角度から検討している。
BLWが開始される条件、なぜ生理学的に安全であるかという説明に加え、基本的な安全対策についても詳細に解説されている。
スプーンで与えてもBLWでも、喉にものを詰まらせる事故をゼロにすることは難しいが、スプーンで与えるよりもBLWのほうが食べ物を喉に詰まらせる危険性は低いという。
本書は、どのような時期に、どのような食べ物をどれぐらい提供するかについても具体的かつ詳細に説明している。
気をつけなければならない食品は多少あるが、家族の食事をベースに考えればよいので簡単だ。

赤ちゃんは家族が食べているものに自然に手を出す。つまり、本来はBLWは自然に始まるものなのである。
また、BLWにより、食べ物をつかみ、口に運び、噛むことが刺激となり、視覚と手指の協調運動、口腔(こうくう)機能などの能力は次々と開花していく。
このような発達によりBLWは進んでいくのだが、それは全身の成長発達を促進するという「良い循環」をも生みだすのである。
本書を契機に多くの方がBLWを実践し、楽しく安全な食事の時間を持つことを願う。

◎著者
ジル・ラプレイ(Gill Rapley)
イギリスの助産師であり保健師。赤ちゃん主導の離乳(BLW: Baby-led Weaning)の提唱者。授乳と小児の発育を研究。20年以上保健師として勤務しながら、助産師、授乳コンサルタント、母乳育児相談員としても活躍。修士課程中に赤ちゃんが固形食へ移行するためにどのような発達上の準備をしているのかについて研究、「赤ちゃん主導の離乳」を理論として発展させた。その後、親が赤ちゃんに離乳食をスプーンで与える方法と赤ちゃんが自分で手づかみ食べをする方法を比較研究して2015年に博士号を取得。3児の母(3人とも誰の手も借りずに自分で離乳食を食べた)。本書の初版(2008年版)はイギリスで社会現象といえるほど注目され、20か国以上で翻訳出版されている。BLW関連書籍を多数出版。

トレーシー・マーケット(Tracey Murkett)
ライター、ジャーナリスト、母乳育児相談員。ジル・ラプレイとのコンビでBLW関連書籍を多数出版。

◎監訳者
坂下玲子(さかした・れいこ)
兵庫県立大学看護学部基礎看護学講座教授。昭和60年、東京大学医学部保健学科卒業。看護師・保健師免許取得。平成2年、東京大学大学院医学系研究科保健学専攻博士課程修了(保健学博士)。鹿児島大学歯学部助手、兵庫県立看護大学(平成16年に兵庫県立大学へ統合)助教授を経て、平成17年、兵庫県立大学教授。現在に至る。同大学臨床看護研究支援センター長、大学院看護学研究科長、看護学部長。日本看護質評価改善機構理事。

◎訳者
築地誠子(つきじ・せいこ)
翻訳家。東京外国語大学卒業。訳書に『紅茶スパイ』(サラ・ローズ著、原書房)、『プーチンの国』(アン・ギャレルズ著、原書房)、『ヒトの変異』(アルマン・マリー・ルロワ書、みすず書房)などがある。